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清水出身の小説家・初野晴先生インタビュー 地元が舞台のハルチカについて

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あって清水区出身の小説家、初野晴先生にインタビューをさせていただきました!地元清水が舞台と明言されている先生の作品『ハルチカシリーズ』について、なぜ地元を舞台にしたのかなど、静岡市に纏わる内容中心で質問するつもりだったのですが、元々私がハルチカシリーズのファンなのもあって、作品についての質問で深く話し込んでしまいました。

一万文字を超えるそこそこ長いインタビューです。インタビュー会場は清水駅前、布の大和屋さんをお借りしました。大和屋さんは何故かいつもハルチカファンで集まるハルチカオフの会場になっています。

初野晴先生について

岡県清水市出身の推理作家。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。現在の代表作『ハルチカシリーズ』を筆頭にたくさんのミステリを執筆されています。2015年には週刊少年ジャンプ連載作品『バクマン。』の作中作である亜城木夢叶の漫画『PCP -完全犯罪党-』のノベライズも手がけました。

ハルチカについて

野晴作、角川書店より2008年から刊行されている推理小説シリーズ。部員もいない廃部寸前の弱小吹奏楽部に入ったハルタとチカが校内外で起こる様々な事件、日常の謎を解決していくライトミステリ。

悩みを抱える登場人物の謎を解決することで部員を増やしていく青春小説の面もあります。舞台となる吹奏楽部は清水南高校。清水区に実在する音楽科・芸術科のある高校です。作中では校外でも清水に住む人ならどこか分かるような描写があちこちに仕込まれています。2016年にアニメ化、2017年に実写映画化。

どちらとも静岡市でロケが行われ、『アニメツーリズム協会-聖地88か所』にも登録されています。私もアニメ放送後から聖地巡礼マップの制作や、未だに続いていますがハルチカオフ会の開催を行い、その繋がりで今回のインタビューも実現しました!やっててよかった!

ハルチカ聖地巡礼の記事もまとめましたので良かったら↓

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さくや

本日はよろしくお願い致します。

初野

よろしくお願いします。

さくや

さっそくですが、小説家として活動を始めるまでの経歴と、目指そうと思った理由を教えてください。

初野

真面目に答えた方が良いの?

さくや

そうですね~、先生の伝えやすいようにお願いできれば。

初野

長くなりますよ。自分の生誕から話さなければなりません。
生まれてすぐ産婆とキャッチボールして母親の度肝を抜いてやりました。子供の頃は刑事に憧れて、44マグナムを乱射しながら「お前ら全員ブタ箱入りだあ!」と叫ぶのが夢でした。……話しはじめてもう着地点を見失ってしまったので、時間を三十秒前に戻します。十代の頃から小説家になりたいと思っていたわけではないです。

読書自体は小学生から習慣になっていましたが、高校で数学と物理の楽しさに目覚めて理系大学に進学しました。卒業後は希望通りの制御機器系メーカーに就職できたので、高校時代にぼんやり描いていた「エンジニアになりたい」という目標は、ある程度は叶った経緯があります。

趣味で小説を書きはじめたのは大学三年生くらいからです。当時の友人が某大学のミステリクラブの会長をしていて、彼との交流がきっかけになりました。自分も書いてみようと思い立った翌日に、JRの鈍行で東京から地元の静岡に帰省して家の物置から古い文豪ワープロを引っ張り出しました。

書きたくても手書き以外に書けるツールが身近になかった時代です。当時は迷いがまったくなくて、それまで読んできた本の文章を思い浮かべながら書いた覚えがあります。

社会人になってからも創作ミステリの趣味が続いたのはなぜだろう。自問自答してみます。大学を卒業して社会人になると身に沁みますが、世の中は正解も公正な評価もなくて、身も蓋もないことを言ってしまえば、あるのは損か得で、でもミステリの世界は問いに対してフェアな回答がある。

根っからの理系人間なので、それが心底好きだから書き続けてこられたんだと思います。読書家は時間を作るのがうまいから本をたくさん読むのであって、仕事をしながらの創作に苦労はありませんでした。初ボーナスでまっさきに中古のワープロを買ったのは、いまとなっては良い思い出です。当時は中古でも八万円くらい。パソコンが四十万円ほどの時代かな。

会社勤めをして三年ほどは友人や同僚に読んでもらっていましたが、最初の異動、つまり転勤がおとずれて、まわりで読んでくれる人が減って、やっぱり読んでくれる人が欲しかったのかもしれない。それで投稿を始めました。

プロの小説家になる一番の近道は出版社主催の新人賞に応募することだと思っていますが、自分は三回の投稿で運良く大賞を獲れてデビューできました。授賞式で『会社辞めた方が良いですか?』と編集者に呑気にたずねたら全力で止められたので、兼業作家の道を選んだのです。

兼業作家のメリットは、収入のベースが確保されて、社会通念や常識を学べ、読書だけでは吸収できない知識が得られることだと思います。あと会社員をやっていると、世の中は理屈より感情でまわっているという当たり前のことが肌感覚でわかります。技術営業をして、さまざまな法人客先と話す機会があったので、ディベートにおける論破の危うさや正論の扱い方も勉強になりました。

一般論ばかり喋る人より、経験で物事を語る人のほうが信用できて、思わぬ創作のヒントを貰えることもありました。こういえばわかりやすいかな。情報量が勝負の都会のサブカルオタクの話より、地方の元ヤンキーの話のほうが、はるかに生産的で面白い。そういう意味で自分の場合、兼業作家は正しい選択だったと思います。

プロになってからは苦労しました。それなりに本を読んできた自負はありましたが、自分が如何にミステリに無知であったのかを痛感しました。自分は基礎が足りてなかった。二作目は常に、どこか間違っているかもしれないという恐れに近いものを感じながら書いた覚えがあります。

さくや

ありがとうございます。続いての質問です。ハルチカシリーズを執筆するにあたり、地元清水を舞台に選んだ理由を教えてください。

初野

デビュー作以降の拙作は舞台を明確に表す固有名詞や地名を基本的に入れていません。寓話性や普遍性のある話が好きだからですが、ハルチカシリーズは何故か地元の「清水」を明記してしまったんですよね。

さくや

最初から明確な理由があったわけじゃないのですね。

初野

そう、自分でも動機がわからず悶々としていたんだけど、転勤先の名古屋で知り合った先輩作家の太田忠司さんが仰った『作者が地名を宣言しないと、読者に舞台を東京と受け取られる』という言葉がしっくりきました。結果論ですが、故郷の清水を舞台として宣言できてよかったと。

小説家って執筆しながら追体験ができるんです。今思うと自分の高校時代を振り返って、やってみたかったこと、やれなかったことを体験したくて、無意識に清水を舞台設定にしたのかもしれません。自分は体育会系だったので、文化部、吹奏楽部には当時から興味がありました。

あと故郷の清水をイメージすることで細かい取材の必要が無いのと、学校(清水南高校)が海に近いという地域性を活用できました。県内で唯一の芸術科があって、学校行事に特徴があるし、校内に弦楽器を演奏する高校生がいた。公立でそういう高校はなかなかないです。

さくや

清水が舞台という部分からハルチカにハマっていった私としてはとてもうれしい回答でした。続いての質問です、初野先生が執筆されている際の一日のスケジュールを教えてください。

初野

社会人生活が長かったので集中して書くときは一般のサラリーマンと同じです。この質問は作家によって答えが違うから参考にならないと思うけど、小学生の夏休みの宿題と似ている部分があると思う。早めに片づけるか、八月三十一日に追い込まれて書くか。小説家の仕事はセルフマネジメントで、全部自分で決めなきゃいけないから、己を律せられない人はしんどいと思う。

さくや

ありがとうございます。次の質問です。ハルチカシリーズでは地元清水に詳しい人間なら、ここが舞台かなと想像がつく描写が随所にありますが、場所は明確に設定してから書き出していますか?例えばバスに乗って移動するシーンでは、どのバス停から乗って、どこで降りたなど現実とリンクさせて設定していますか?

初野

それはしています。小説を書く時は、登場人物の行動原理・動機が重要で、マップを作ったり、時間軸を書き出して、誰がどこで何をしているかを明確に設定します。ただし学校や交通、地域性に関しては空想の設定も交ぜています。

さくや

事実とオリジナルを混ぜて書いているんですね。

初野

そのほうが書いていて面白い。自分はリアルな設定より、作り物の箱庭世界が好きです。ぼかしながら書いています。

さくや

取材で清水に帰る機会は多いですか?

初野

帰る機会は多いですけど、取材というより、もともと友人が多いですし。

さくや

地元ですものね。

初野

うん。取材は写真を撮ったり、舞台にする場所へは行きます。例えばハルチカシリーズの『空想オルガン』では文化会館(清水文化会館マリナート)がでるけど、中の様子はしっかり取材する。ただしそれを正確に書くかどうかは別。

さくや

あと静岡の名産品に絡めたネタも軽くありますよね。

初野

軽くですよ。深く書いてしまうと他県の方はわからない。内輪ネタになり過ぎないようにしています。語弊を怖れずに言うと、清水に一度もおとずれたことが無くても、清水を舞台に書けてしまうのが小説家の醍醐味じゃないかなと自分は思います。資料と想像だけの究極の疑似体験。ハルチカでは吹奏楽部自体、想像で書いていますから。

さくや

続いての質問です。史実に切り込んだ内容も多いハルチカシリーズですが、『惑星カロン』では最新技術を扱う描写もありました。現実の年代と結びついた内容への考えを教えてください。

初野

具体的な年代は作中で明記していませんが、『千年ジュリエット』を読みこんだ読者にはわかるよう触れています。ハルチカは穂村千夏という少女の額縁小説の形式を取っています。冒頭は回想からはじまって、その部分に大人になったチカちゃんが出てくるから、シリーズ最終章のエピローグで明らかにするかもしれません。

あとは普遍性を持たせたいので、なるべくコンビニとかスマホの活用は入れないよう気をつけています。代わりに私の嗜好として、七十~八十年代の時代性の刻印を密かに入れまくっていますが。

ちなみに『惑星カロン』で扱われるデジタルツインは最新技術ではなく、工業分野では既に実用化されていて、あの中編は不老不死という普遍的なテーマを扱っています。

さくや

世代の違う私からしたら70年代80年代のネタは分かるネタと分からないネタがありましたけど、その辺りは先生の趣味なのでしょうか?

初野

サラリーマン時代、まわりにいるのが同年代か上の世代の人たちだったんです。その人たちが読んでも楽しめる内容にしたくて、共感していただけそうなネタを暗号っぽくこっそり仕込みました。書きはじめた当初の読者層は中高年なんですよ。

そもそもハルチカシリーズでは、登場人物は若者言葉をほとんど使わない。常識的な日本語会話が多いはずです。それどころか会話に駆け引きを駆使する高校生すら登場します。

さくや

私がそうなのでハルチカのファンは若者世代が多いと思っていました。

初野

事実そうなっていることはありがたいのですが、純度の高い青春小説を書いているわけではありません。少年少女をリアルに表現しないと現代は語れない、というのは思い込みだと常々感じていまして、キャラクターは作り物だし、恋愛しないし、性の匂いもしない。

ハルチカシリーズは吹奏楽部を何部に置き換えても成立する普遍性を持たせています。いつの時代も若者は柔軟な感性を持っていますから、そちらのほうが受け入れられると思います。

さくや

アニメや映画は青春面が強く出ていましたね。

初野

メディアが違えば、それが得意な表現方法はあると思います。原作のチカちゃんの地文の面白さは、活字の世界でしか表現できませんしね。未経験の吹奏楽部の設定といい、語り手を少女にしたことで、自分としては究極の疑似体験ができました。

さくや

全部想像なのですね。登場人物の吹奏楽に対する思いはリアルだと思いました。

初野

音楽に対する思いは本物ですよ。ただし虚構世界であることも強く意識しています。これだけ男女が入り混じっているのに全く恋愛の話にならないでしょう?

さくや

確かに!高校生の男女なのに。

初野

デビュー作以降の拙作の特徴です。作中でペアを組む男女は互いに恋愛感情を抱かないケースが多い。恋愛以外の男女の絆を活字で示したいし、それが成立するための設定を凝らしている。たとえばハルチカの三角関係。

さくや

アニメでハルチカを初めて知った方は、一話のカミングアウトというか、ハルタの秘密が分かるシーンにびっくりされたんじゃないでしょうか?

初野

ハルチカのハルタと、『1/2の騎士』のサファイアは似ているところがあります。トランスジェンダーに見える部分は男女間の恋愛をさせないための仕掛けであって、ストーリーの中で掘り下げてはいません。

自分の創作には優先順位があって、恋愛に重きを置いていないです。ちなみに『ハルタとチカはくっつくんですか?』という質問がよくあるけど、その結末は決めています。ハルチカはチカちゃんの回想だから、大人になったハルタがどうなっているのか最後で明かされます。

さくや

そこまで書いちゃうのですね!

初野

許されれば書きたいです。ハルチカシリーズは今半分くらい、折り返しで終わりは見えています。

さくや

まだ半分あるとはいえ寂しいです。

初野

もともとシリーズ化を前提としていなかったので、六冊まで続いていること自体ありがたい話です。一作目の『退出ゲーム』で終わるつもりだったのに、今では単行本未収録作品を含めて三十本ほど中編を書かせてもらっていますから……。ハルタやチカちゃんたちをきちんと卒業させてあげるのが読者への礼儀だと思っています。

さくや

個性豊かなキャラクターは、そういう人がいたら面白いだろうなって想像して書くのでしょうか?

初野

それはあります。あのシリーズに登場する変人には特徴があって、地に足がついた言動と専門性を持たせています。自分は理系なので、専門性の重要さはわかっているつもりです。ネットやスマホのおかげで、いろいろな知識を広く浅く持てるような時代になったからこそ、ブラックリスト十傑みたいなキャラクターに注目すると面白いです。

さくや

先生の周りにそういう人はいましたか?

初野

大学の中にはいたかな。でもモデルにはしていません。

さくや

ありがとうございます。続いての質問です。ハルチカシリーズはリアルな青春を感じさせる掛け合いを描きながらも、ミステリとして扱う内容は学生の手に余る、社会の在り方が根底にある短編もあります。それを学生であるハルタに解き明かさせることへのこだわりはありますか?

初野

閉じた世界の繊細自慢の少年少女といった話は書きたくなくて、あえて枠組み、学校の外に出ていく展開にしています。それが物理的な広がりを見せるのか、世代間のつながりを掘り下げるのか、時系列で遡っていくのかは、いくつかの手法があって、自分の中である種の実験小説っぽいことを各中編でやっています。『決闘戯曲』という中編では、演劇という作中作ですがハルタとチカちゃんはタイムトラベルをしてしまいますしね。

さくや

高校生であることが自由度のカギにもなっているのですね。

初野

高校生は何事も好奇心で動ける年代です。そこは大事だと思います。あと万能感があるハルタは謎を解くことができても、問題を解決することはできません。問題を解決できるのはチカちゃんのような熱意を持った人々です。そして彼らでも手に負えないことは大人が力を貸す。おそらくそれは一作目の『退出ゲーム』から通底しているはずです。

さくや

続いての質問です。アニメ化、実写映画化にあたって制作会社へ提案されたことはありますか?

初野

ほぼないです。自分は活字のプロで、向こうは映像で魅せるプロで、やっぱり畑が違う。イチから関われない限りは口を出しません。それまで自分は送り手の立場でしたけど、原作をどう解釈するのか受け手で見てみたいと純粋に思って、そういう楽しみはありました。

さくや

アニメにはオリジナルキャラクターの朝比奈姉妹が登場しましたね。

初野

橋本監督を信頼してお任せしました。活字ではフォローできない部分の補完キャラクターとして必要だったと思います。具体的にいうと、原作のチカちゃん主観の地文をだれかが担わなければならない。

さくや

確かに。どうやって映像化するのか想像つかない話もありました。

初野

制作スタッフは尺の短さで苦労されたと思いますが、『退出ゲーム』の表現方法は面白かったです。

さくや

アニメの公式サイトでは原作小説では明かされていない登場人物の誕生日が紹介されていました。各登場人物のプロフィールは詳しく設定されているのでしょうか?

初野

原作に関しては読者の想像の余地を入れたいので、細かいプロフィールは明記していません。アニメ版の誕生日設定は橋本監督に決めてもらいました。

さくや

そういえば、ハルタとチカの名前に春と夏が入っているのには理由がありますか?

初野

ペアを組む暗喩表現です。隣同士の季節。夏と冬にしなかったのがミソです。

さくや

メディアミックスにより、ハルチカ舞台への興味から静岡、清水へ訪れるファンの方々も居ました。静岡市とのコラボやファンの活動については認知されていましたか?

初野

そのあたりも全てお任せしていたので知りませんでした。さくやさんとは静岡のサイン会ではじめてお目にかかって、いろいろと教えていただけたんですよね。活字以外は本当に疎かったので感謝しています。

さくや

光栄です。地元のコラボも相談はありませんでしたか?

初野

まず版元が話を進めて、メールで確認といったプロセスです。もしかしたら版元が私に気を遣って、独自に判断したものもあるかもしれません。そのへんは信頼関係がありますから。

さくや

ありがとうございます。原作の話に戻しますが、最新刊の『番外編』では、ハルタとチカ以外の登場人物の現在の日常に触れていました。逆に明かされていない過去、例えば芹澤さんとカイユ、成島さんとマレンの出会いのエピソードなどを執筆する予定はありませんか?

初野

ぶっちゃけると、番外編はたぶん読者が読みたいだろうなってエピソードを……全部省いて書きました。

さくや

省いて書いたんですか!?逆に?

初野

そう、逆張り。それと番外編の第二段は担当編集者に書いてみないかと言われているので、おそらく出します。

さくや

ほかの新作の話も結構聞きましたが、完成はいつ頃になりそうですか?

初野

今年はノンシリーズの新作をなんとか出して、さらに頑張ってハルチカ本編も出したいです。

さくや

なるほど、楽しみです!
質問は以上です、本日はありがとうございました!最後に、ハルチカには没ネタがたくさんあると聞いたのですが、おひとつお聞かせ願えないでしょうか?

初野

没ネタは面白い、つまらない以外にも、規制表現にかかわる部分でそうなるケースがあります。デリケートな問題ですが、参考として載せておきます。文章が荒いことはお許しください。

■登場人物
 ・ハルタ
 ・チカ
 ・生徒会長の日野原さん
 ・文芸部の部長、山田(男子)
 ・文芸部の副部長(女子)

■シチュエーション
 文芸部の山田が高校生の分際で断筆宣言をしている。ハルタとチカと日野原が様子を見に行き、文芸部の副部長の台詞から場面はスタートする。

「山田くんの才能を潰すのはあなた方――いや、この国の社会のあり方じゃないですか?」

 この国……話が大きくなってきた。三人で顔を見合わせる。どうします? 聞きましょうか。じゃあどうぞ。

「た、たとえば、山田くんの随筆が全国紙の新聞の日曜版に掲載されたことがあったんです。そのとき、山田くんに無断で修正が入ったの。私も読んで驚いた」

「修正? どんな?」と眉根を寄せるハルタ。

 副部長は生徒手帳を取り出し、ペンで文字を書いてわたしたちに見せてくれた。

 ・子供

 ・子ども

「『子供』という漢字が不適切だからと、『子ども』と勝手に修正されたんです」

 わたしにはさっぱりわからない。「なんで?」

「調べてわかったんですが、『供』はおともの供で、こどもは大人の添え物ではないから、供という字を書くのはよくないらしいんです」

 はあ、というため息とともに日野原さんが呆れた顔を返した。

「あのな。どういった経緯があるのか知らないが、差別だと感じる人間がいるなら、それを回避すればいいだけのことだろ」

「それはそうですが、山田くんは漢字と平がなの無意味な混ぜ書きほど嫌いなものはないんです」

「人は世につれ、世は人につれ。時代が変化していくうえで俺たちの価値観も変えていかなきゃならないんじゃないのか?」

「あの……」と、唐突にハルタがふたりの間に割って入った。

「その問題の随筆を読ませていただけないでしょうか?」

「部室にありますので読むのは構いませんが、探すのに手間と時間がかかります」

 副部長はぎっしりと並んだ書架を指さし、腕組みした日野原さんが面倒臭そうに吐き捨てる。

「おい。パソコンで管理してないのか? そういった備品だったら学校側が用意しているだろう?」

「文明の利器は信用ならない、パソコンを使うなという部長命令です。文明の利器でさえ、山田くんの才能を検閲している状況だからです」

 いったいこの娘はさっきからなにをいっているのだろう、とわたしとハルタはしきりに首を捻った。

「『ど○る』と入力したら、漢字に変換されませんでした」

「わーわー。やめてくれっ」日野原さんが両手をふって遮る。

「お前ら、差別用語を連発したら、いずれ文芸界や出版界に存在すら許されなくなるぞ? 言葉によって傷つく人間がいることも想像したらどうだ?」

「だからといって、目隠しされるような真似が許されるとでも? 不発弾を拾ってきて、それがなにかを教えてもらえず、いきなり投げつけることが起きてもいいのですか?」

「そんな不発弾なら残らず回収して、最初から全部なかったことにすればいい」

「できるわけ、ないじゃないですか」

「やるったらやるんだ。時代の変化の話はさっきしただろ」

「望まれて、必然をともなった変化ならいいんです。無知や思い込みで言葉がいつの間にか殺されるようなことがあってはならないんです。言葉に罪はありません。強いて言えば無罪です。料理人が包丁を持っていたとしても、それは罪になりません。あくまで使う側の問題でしょう?」

 副部長が拳をつくって力説し、日野原さんの鼻息も荒くなった。

「料理人が路上で包丁をふりまわさない保証がどこにあるんだ?」

「わからない方ですね」

「わかったような理屈をこねているやつよりマシだ」

「前からその『俺様』態度が気に入りませんでした」

「『私は正しい』なんてサルでもいえるぞ」

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一問一答

没ネタ、思いっきり表現規制に掛かってアウトだったそうです。本題はここまで。インタビュー時間が余ったので、雑談をしながらいろいろ聞いてみました。ここからは一問一答です。

さくや

ミステリ以外のジャンルを書くとしたら、何を選びますか?

初野

どのジャンルを書くにしてもミステリの要素は入ると思います。

さくや

先生の趣味などあれば教えてください。

初野

お菓子やパン作り。粉から作る錬金術だと思うようにしています。完成形をイメージして、それが確実にできあがる行程は素晴しい。十代の頃は読書の他にテレビゲームもしていましたが、ファミコン派ではなくセガ派だったので、クラスメイトと話が噛み合わなくて困った。アレックスキッドの攻略法なんてだれも教えてくれない。

さくや

先生の作品の中で一番好きな作品はありますか?

初野

とくに贔屓はなくて、今書いている作品が一番好きです。語ると長くなるのは『漆黒の王子』と『1/2の騎士』かもしれません。自分の書きたいものを書こうとして苦労した二作目、これが最後の刊行になるだろうと覚悟を決めた三作目です。

さくや

先生はあとがきを書くことがあまり無いですが、理由はありますか?あとSNSなどはやらないのでしょうか?

初野

あとがきは読後の余韻を壊しかねないので、できる限り避けています。ただ、上手に書かれる作家もいます。SNSはいまのところやるつもりはありません。

さくや

ハルチカの各短編のタイトルはどのように付けていますか?いくつか有名作品を彷彿させるような題もありましたが、内容に合わせてのパロディもあるのでしょうか?

初野

タイトルも創作のひとつと思っていますので、読者の印象に残りやすいものを考えています。他作品から影響されたことはたぶんないです。偶然じゃないかな。そういった類似性は面白いですし、光栄ですね。ノンシリーズが文庫化されるときに改題されることもありますが、あれは版元の編集や営業サイドの要望です。作品は一人ではなく、編集者と営業のチームワークで出来るもので、いずれも納得したうえでタイトルを変更しています。

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意外とノリが軽い先生
 

初野先生、ありがとうございました!ζζ