1911年創業 入江商店街の呉服店
静岡ツイッターオフにてご一緒した縁で清水区入江町にある『黒田呉服店』さんを取材させていただきました。あまり馴染みのない業種をうまく紹介できるか不安ですが、文化やお仕事について沢山お話していただきましたので頑張って紹介いたします。
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黒田呉服店について
1911年創業、今年で107年目。こちらの写真は創業から16年目の昭和2年頃のものですが、昭和10年に現在の場所に移転し、最初の店舗があった場所は黒田呉服店の専用駐車場になっています。写真右端で座っている方が初代の社長さんだそうです。
黒田呉服店があるのは清水区入江の入江商店街。ちびまる子ちゃんが育った町で、作中に登場した多くの地元のお店はこの入江商店街にありました。
数年前にはちびまる子ちゃんスタンプラリーが清水区内で開催され、黒田呉服店もスポットとなり、グッズなども取り扱っていたとのこと。せっかくの国民的アニメの舞台ですから、もーっと盛り上げられると良いのですけどね。
呉服店のお仕事
悉皆
呉服店の業務は和服を売ることだけではありません。呉服店としての特別な業務がこの『悉皆』です。クリーニング全般、かび取り、しみ抜き、染め替え、仕立て直しと、大幅なリメイクまで可能な、かなり幅広い着物のお手入れ業務になっています。
チラシ右上の2枚の写真、真っ黒な喪服が華やかな桜色に見事にリメイクされていますね。ここまで色を染め変えることも可能だそうです。寸法を仕立て変えたりとガラッとイメージを変えることができます。
週に二回着付教室も行っています。10回1セットでしっかり学べそう!受講料もお得ですよ!お次は店内を紹介していきます。
店頭販売・誂え着物
黒田呉服店ではニーズに合わせた様々な和物を販売しています。和服・着物だけではなく、下駄や手ぬぐい、かばん、入口傍では洋服も扱っていました。
既製品の販売も確かな需要があるわけですが、呉服店のオススメ・人気としては誂え着物(オーダーメイド)が中心とのこと。誂え着物は単純に自分の理想の柄で作れるというだけでなく、体に合わせて作るので後から調整が利き、寸法を再度合わせるのも容易になるそうです。逆に既製品は完成されてしまっているので後からの調整が難しいとのこと。
清水湊町シャツ・濱シャツ
もちろん店頭商品にも良い物揃っています!
『湊町シャツ&濱シャツ』は綿素材である浴衣生地と手拭い生地から作られていて、着物の和の雰囲気と涼しい風が通る着心地の良さ&吸収性などの利便性を兼ね備えた、暑い夏にピッタリなシャツ!湊町シャツが襟無し、濱シャツが襟ありです。
デザインも清水港の雰囲気×夏っぽい模様が揃っていて、これからの清水の夏祭りシーズンに着ていきたいと感じる品揃いです!
注染本染(ちゅうせんほんぞめ)の手ぬぐい
注染本染(ちゅうせんほんぞめ)は明治時代に大阪で生まれた染料の注ぎ染め技法。静岡県では浜松が有名です。表と裏の二度染めで両面が綺麗に、一度に20枚から30枚染めることができる技術だそうです。手作業ならではの繊細なぼかしやにじみの色合いが魅力です。カラフルで模様も様々な手ぬぐいが店頭販売されています。
帯締
引き出しを開けていただくと、並んでいたのは色鮮やかな帯締。帯がほどけないように結ぶ重要な紐ですね。着物と帯とのバランスを取った後に帯締を決めますが、色も豊富な着物の最後のまとめ役で、帯締のコーディネートで着物姿全体のセンスが決まると言っても過言ではないくらいなのだとか。こちらの写真は礼装用です。
こちらはカジュアルな着物に合わせるタイプの帯締。編み合わせで模様のようにも見え、遊び心があります。
華やかな振袖には帯締も華やかに。赤・黒・金を基調に大きく装飾が施されていますね。
着物を見せて頂きました
こちらは『たけなわ』という名前がつけられたお着物。淡いピンクから明るい日の色への諧調がとても綺麗ですね。こちらの着物は松と梅がデザインされ、新春にふさわしい柄です。
振袖、こちらも私好みのものを選んでいただきました。未婚女性の礼装である振袖は華やかな柄で記念の場にふさわしい一着ですが、現代では着る機会の少なさからレンタルが多いそうです。
成人式くらいしか着ないという方もいますからね。他の用途としては自分が結婚するまでは友人の結婚式で着れますよとのこと。その後は自分の子供へ、そしてまた孫へと世代を超えて大事に受け継がせることのできるのが一点物の価値の一つだと思います。
とめてあるクリップが扇形で可愛かったです笑
誂え着物のデザイン
こちらは昭和初期の美術本とのこと。何に使用するかというと、
美術本の作品から和の心を持ったワンポイント装飾を帯に付けています。写真の布は薄い青色ですが、もちろん他の色との組み合わせもできます。これも誂え着物ならではですね。美術本の作品一点一点の意図を調べ、自分が思い描くものに合致した飾りつけができる訳です。
染帯の絵図柄はしっかりタイトルや解説までカバーされていました。こちらのモチーフは勧進帳が有名な歌舞伎の演目ですね。着物は時代や流行りに関係なく和の美しさを感じるものということで、歴史ある和文化からアイディアを探す手法が多いみたいです。
それぞれのストーリーから引き算で、大切だと感じる部分を残してデザインに落とし込むのだとか。ちなみにこのワンポイントはお太鼓結び、帯を結んだ際後ろ正面から見える部分に来るようになっています。
デザインには色合いも最重要!着物に合った色見本帳と着物のファッション本と併せて理想のコーディネートを探していきます。
本物の和文化を伝える
黒田呉服店では用途に合わせた着物のレンタルも行っています。それでもやはり、一度着て終わりではもったいないというのが本音なんだそうです。私もそう思います。
誂え着物の良い点をここまでいくつか紹介いたしましたが、デザインや利便性だけではなく、本物の着物・本物の和文化を伝えていくという意味で重要なことなのだと言います。
扱う着物も安さを求めてインクジェットで柄を付けた量産品ばかりでは本当に和文化の発信と言えるのでしょうか という話です。
店内に飾られていた手ぬぐい、今回見せてもらった柄で一番のお気に入り。このような淡いぼかしや色は本染ならではです。
安い量産品でも着物を着ているということには変わりないのかもしれませんが、だからこそ本物を扱う職人からしたら、そのようなものが着物として受け入れられる光景が度し難いのでしょう。
かといって時代に合ったもの・ニーズに合ったものを売っていかなくては商売にはなりません。量産品以外でも着物にも流行が付随するタイプのものもあるそうで、そういった作品も扱うことになりますし、黒田呉服店は基本的にニーズに合った様々な製品を扱うようにしています。今の世が求めるものを受け入れながらも、伝統を重んじてきちんとした信用をもって売るのが昔ながらの呉服店の売り方だそうです。
工芸師の中には、現代のニーズではすぐに生活に繋がる収入が得られない為に、弟子を作ることもままならず、一人の職人が制作できなくなれば、それで文化が途絶えてしまう危機にいる方、実際に近年に途絶えてしまったものも少なくないそうです。
本物の和文化を守り、後世へ伝えていくために何をしていったらいいか常に悩みながらの試行錯誤、話を伝えていくことで、まずは呉服店や職人の現状を知ってもらうのも大切と言います。
現代のニーズは認めざるを得ない、その上で良い物は良い物として次世代に繋がっていくもの。本物の良さが知られなくなるのはもったいない、まずは知ってもらうことが大事。と熱い思いを語っていただきました。
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店舗情報
店名 | 黒田呉服店 |
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住所 | 〒424-0831 静岡県静岡市清水区入江1丁目8-23 |
連絡先 | 054-366-0620 |
駐車場 | あり |
定休日 | 毎週水曜日・第3木曜日 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
サイト | http://www.kuroda-gofuku.com/ |